2017年5月19日金曜日

ポエム:Rustはロボットプログラミングのデファクトスタンダード言語となりえるか

RustはMozillaが開発するプログラミング言語で以下のような特徴のあるらしい。

Rust は安全性、速度並列性にフォーカスした現代的なシステムプログラミング 用のプログラミング言語です。 ガベージコレクション無しでメモリ安全であることが、これを可能にしています。

速度、並列性、GC無し、などは制御の人だったら魅力的に感じるのではないだろうか。

ロボットのプログラミングというと、C++かPythonあたりを使っている人が多いだろう。私はPythonが大好きで趣味ではPythonばかり書いていた。そして仕事ではC++がほとんどだ。
だが、ここ2ヶ月くらいRustにハマっている。ひょっとしたらRustはロボットと非常に相性がいいのではないかと思っている。

Rustのいいところ


RustはC++に似た特徴がいくつかある。
効率がよい、GCがない、低レベルまでかける、といったロボットならではの要求を満たすところだ。

そしてC++より以下の点でロボット開発に向いていると思う。

とくにチャレンジングなロボット開発をしていて、リアルタイムな制御もしていて、最終的な品質も担保したいような場合にマッチすると思う。



1. 柔軟で強力なエラーハンドリング


C++だと例外を投げたり、返り値でエラーハンドリングする。しかしこれは簡単に無視できてしまう。
一旦例外を捕捉しないでコードを書いてしまえば、どこで何をキャッチすべきかなかなか解らなくなってしまう。
一方RustではResult型という返り値でエラーハンドリングするようになっていて、これは基本的に無視出来ない。無視するにはunwrap()関数を呼ぶなどする必要がある。なのであとでエラーハンドリングをちゃんとしようとしたときに、unwrap()を検索すれば、どこのエラーをハンドルすればいいかが分かりやすい。
もとからちゃんとハンドリングしてコード書ければいいが、開発の段階では書いたコードが実際にロボット上でうまく動くか確かめるために、とりあえずコードを動かしたい要求がある。一旦エラーを無視して書いたコードがあとで高品質に出来るというのがとても素晴らしい。
ロボットのコードは本質的に失敗が発生するもので、そのハンドリングはロボットの品質に直結する。

2.なれるまではコンパイルが大変=テストなくてもそれなりに動く?


Rustはコンパイル時に厳密に型チェックがあり、なかなかコンパイルが通らない。所有権という概念もなかなか慣れず、初心者はコンパイルを通すのに苦労する。
一方でこれはテストを書かなくてもそれなりに動くことが期待できるということでもある。型のない言語だとユニットテストがないと本当に動くか分からないが、Rustではコンパイル出来たコードは大抵動く。ロボット開発ではコードを動かすのにロボットへ転送したり、ロボットを充電したり、準備したり、とにかくコストがかかる。コンパイル時にエラーを出せるだけ出せればトータルコストを大きく下げることになる。
型は書くのが面倒だが、Rustは型推論があるので型を省略できることが多く、それほど苦にはならない。includeファイルがいらないから新しい型を追加するもの簡単だ。
ちなみにテストもコードと同じ場所に書くことが出来るため、テストも書きやすい。

3.並列性


ロボットではマルチプロセス、マルチスレッドは当たり前になっているが、スレッドの取扱はC++では非常に難しい。人間の理解の範疇を超えていると思う。Rustではオブジェクトの所有権が厳密に定まっているためマルチスレッドでも安全にデータアクセスしやすい。まだあまり試してないので本当に便利かは分かっていない。

4.現代的なビルドとパッケージシステム


cargoというビルドツールが標準で提供される。また、crateという外部ライブラリとの連携ツールも統合されている。crateはnpmやpipのようなものだ。現代的な言語ではあるのが当たり前となっているが、C++にはないので嬉しい。
ビルドもCMakeのよく分からないマクロと格闘したり、automakeのようや過去の遺産も必要ない。また、code styleなども公式に決まっているから、rustfmtというフォーマットツールを使えば、スタイルの統一も容易。


5.Roboticsのどのフィールドにでも使える



ロボットプログラミングというと、知能系はPythonで決まりだし、画像処理や制御はC++だし、マイコンはCだったり最近はRaspiでもPythonだったりするけど、Rustはそのどこにでも最適だと思う。
LLVMだからWebでも使えるらしいし。(つかわなけど)
ロボットのプログラムが全部Rustになったら幸せな世界ではないか。



もちろんRustはC++と同じようになんでも出来る言語をめざしているから、だめなことも出来てしまう。ただ危険なことはunsafeブロック内でしかできないので分かりやすい。

あとは個人的趣味だけど、ifが値を持つとか、最後の式がreturnされるから明示的にreturn書かなくていいとか、lambdaが書きやすいとか、元lisperには非常に馴染みやすい。マクロも強力らしい。


Rustの悪いところ


一方で悪いところも結構ある。


  1. 歴史がないのでググってもあまり情報が出てこなかったりする。また、決定的なライブラリがまだなかったりする。ただ、Webとかの人に比べて、Roboticsの人たちは自分でライブラリを作るのに慣れているからそれほど問題にならないのでは、と思う。
  2. 難しすぎる。新しい概念についていくのがつらい。仲間もなかなか増えなさそう。
  3. ツリーやグラフが書きにくい。ロボットだとわりとグラフとかツリー構造とかよく出てくるけど、Rustの所有権モデルだとtreeの表現が非常にやりづらい。ロボットモデルはTreeだし、RRTとかもろTreeだし。
  4. Mozillaが開発元っていうのがちょっと不安 (cf: Swift, Go)

私は結構気に入ったので、少しロボットの人たちに布教してみようと思う。


参考



Goとの違いを知りたい人むけ
C++との違いを知りたい人むけ

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